2008/05/10 (Sat) 例えばヤンバルクイナやタスマニアデビルの生涯を彼女は何と呼ぶのだろうか？

どもー、「ロープウェー」って言う時はみんな「ロープーウェー」って言ってるなぁと日々思ってるメガヨメのベルです。

さて、ゴールデンウィークもすっかり終わり、またロクでもない日常が始まっているわけですが。
そのゴールデンウィークの真っ只中、連休特有の緩みきった空気感の中、とあるテレビ番組を見ていたのですよ。
最近のニュース、みたいな感じで先月に上野動物園で死んだパンダの事を取り上げていて、献花台が設置されて大勢のファンが別れを惜しんでいる様子が映っていました。
その中の何人かに番組はインタビューしていたんですが、みんな涙ながらにパンダへの思い、悲しい胸の内を語っていました。

と、そこまでは良かったのですが、最後に一人の女性がこんな事を言ったのです。

「みなさんに愛されて彼は人生を‥‥、いやパン生をまっとうしたと思います」



‥‥パン生？

ものすごく悲しそうな表情で、彼女は至極真剣に語っているんですが、これって「（自分が飼っていたわけでもない）たかがパンダの死を、肉親を失ったかのように悲しむ人達」をバカにするブラックジョークなんですよね
アタシがホントに大嫌いなのは、自分の中で手前勝手に美しいストーリーを作り上げて、その主人公に感情移入して妙な感傷や感慨に耽っているエセ博愛主義者です。
そんなのは自分の事を「なんて優しい人なんでしょう！」と自分で撫でくり回している自己耽溺にすぎません。
「人生をまっとうした」かどうか、「幸せな生涯だった」かどうかなんて、所詮は本人（前出の彼女に倣うならば「本パン」とするべきか？）にしか分からないんですよ。

さも情け深い、心優しい人間ぶっている貴方、じゃあ訊くけれども、貴方はヴィーガンですか？もしくはヴェジタリアンですか？
もしそうでないとしたなら、貴方は毎日食べている唐揚げやハンバーグや刺身やソーセージや干物や、スナック菓子や調味料に含まれるエキスや、皮革、毛皮製品になる為に、世界中のどこかで日々殺され続けている全ての動物達に、花を手向け、哀悼の意を表し、パンダに対するのと同等の涙を流すのでしょうか？
ここで断っておきますが、アタシは〇ー・〇ェパードみたいな環境テロリストではありません。
もちろん、ヴィーガンでもありません。
肉も魚も野菜も、ほぼ好き嫌いなく何でも食べます。
そんなアタシが何故こんな事を言うのか？
要は「かわいい」って価値基準だけで全てを切るな！って事なんですよ。
肉を食べるなって言ってるんじゃないし、かわいいと思うなと言ってるんでもない。
食用、その他の理由で殺されていく動物達の死には無邪気なまでに無頓着なくせして、自分がかわいいと思った者の死についてだけは大袈裟に悲しみ美化しようとするのは都合が良すぎるって事。
極論すれば
「仔羊の肉をおいしい」って思える人は
「（おいしいという仮定の上で）仔犬の肉をおいしい」
と思って食べられる人なんですよ。
生きている仔羊を見れば可愛いと思うし、とてもじゃないけどその仔羊を手にかけるなんてできないけど、調理された仔羊の肉は罪悪感もなく美味しく食べられる。
それが仔犬に代わったところで、結果は同じだという事です。
違いますか？

「その矛盾こそが人間だ」
なんて物言いもあります。
それを否定する気はありません。
ただ、その矛盾に何の疑問も持たずに、自分の気持ちのいいように周りを利用するのはあまりに自分勝手です。
「幸せ（だった)かどうか」なんて事は他人に決めてもらう事ではありません。
決められる事でもありません。
そう思わないと悲しくてやりきれない、そんな思いから出た言葉だとするなら、せめて素直に「思いたい」と言えば良かったんですよ。
死を悼むのは結構ですし、「思いたい」のは勝手ですから。
「思います」なんて言っちゃうから「善人ヅラしやがって」とツッコミ入れられるんですよ、アタシみたいな輩に。
現実の世界を、テレビや映画でも観るように自分の見たいものだけ選んで見られるなんて道理はありませんから。

っていうかさ、全国ネットでネタでも何でもなく「パン生」なんて言っちゃえるセンスが実は一番恐ろしいな。